放射線とは、光の仲間の電磁波や高速の粒子をいいます。自然の日光にも含まれています。
1985年ドイツの物理学者レントゲンによりX線(すなわち、わからない線)として発見されました。
物質中を放射線が走ると、その道筋にそって物質の分子が電離します。この電離作用により、高いレベルの放射線は細胞を殺し(DNA切断が主な原因)、細胞の成長と分裂を阻止します。がん細胞はその周囲にある正常な細胞より早く成長し、分裂します。この特徴を生かして、腫瘍に放射線を照射し、ダメージをあたえることで治療を行うのです。
手術で取れない部位の腫瘍、取りきれない腫瘍、手術後の再発防止など。がんや肉腫の悪性疾患が中心ですが、良性腫瘍に対しても行うことがあります。
例)
- 脳腫瘍
- (髄膜腫、下垂体の腫瘍など)
- 鼻腔内腫瘍
- (扁平上皮癌、線維肉腫、リンパ腫など)
- 口腔内腫瘍
- (扁平上皮癌、線維肉腫、メラノーマ、エプリスなど)
- 体表面の腫瘍
- (軟部組織肉腫、血管肉腫、肥満細胞の腫瘍、肛門周囲線腫など)
- 骨の腫瘍
- (骨肉腫、軟骨肉腫など)
- その他
- (甲状腺癌、前立腺の腫瘍、膀胱の腫瘍、腸の腫瘍など)
■ 診察
まず、患者さんの様態を診察させていただきます。放射線治療は腫瘍の種類や大きさ、患者さん自身の状態によって治療方法が大きく異なります。
放射線治療は身体のほとんどの部位の、多くの種類の腫瘍の治療が可能です。放射線治療にはいくつかの役割があります。
- 積極的治療…
- 治すことを目的とした治療。毎日〜隔日で放射線を照射する
- 緩和的治療…
- がんを完全に治すことが不可能な場合でも、放射線治療により苦痛が除去されることもあるため、腫瘍を小さくし、腫瘍による圧力、出血、痛み、さらに他の症状を減らす目的で用いる
- 術前照射…
- 手術後に残っている可能性のあるがん細胞を根絶するために行う
- 術後照射…
- 手術後に残っている可能性のあるがん細胞を根絶するために行う治療
- 化学放射線治療…
- 抗がん剤と一緒に放射線照射を行うことで、よりいっそう腫瘍に対してダメージを与る
これらの方法を組み合わせて治療することもあり、放射線治療は、幅広い役割を担うことができる治療です。患者さんによって、どの方法を選択するのがベストかを診察します。
■ 治療計画(シュミレーション)
診察をし、放射線治療適応であると判断した場合、放射線の照射の仕方を考えなくてはなりません。これはX線写真やCTなどの検査を参考にして照射する位置と範囲を決定します。当院では、なるべく正常組織をさけてかつ、なるべく病気の部位は全部含むようにCT治療計画と呼ばれる、CT検査のデータを直接用いた治療計画を行います。これは微妙な角度で複雑な照射範囲をコンピューターによって決定することが可能です。
また、年齢や全身の状態を考えて、1回にどれだけの線量を照射するか、全部でどれだけ照射するかをそれぞれの患者さんに合わせて決定します。
また、放射線治療の1回目を行った時には、CT治療計画が正しく行われているか、照射部位の位置確認のためのレントゲンを撮影します。
■ 放射線の照射
まず、患者さんの様態を診察させていただきます。放射線治療は腫瘍の種類や大きさ、患者さん自身の状態によって治療方法が大きく異なります。放射線治療は身体のほとんどの部位の、多くの種類の腫瘍の治療が可能です。放射線治療にはいくつかの役割があります。
- 積極的治療…
- 通常、一日2Gy(グレイ)前後の照射線量で、毎日または隔日(月曜ー土曜)の照射を5週間前後続ける
- 緩和的治療…
- 1週間に1回〜1ヶ月に1回程度の放射線照射。積極的治療よりも照射線量が多くなることが多い
放射線が必要な部分に正確に照射されるためには、治療中は動かないことが大切です。そのため、動物の放射線の照射時には、人間とは異なり、毎回全身麻酔が必要となります。短期間に何度も麻酔をかけるため、麻酔のリスクはかなり高いものとなります。
動物に全身麻酔をかけたら、姿勢を決めます。そして皮膚にマジックで照射領域をマークします。
準備が整ったら、獣医師は照射前に治療室を出ていき、隣の操作室にあるモニター画面で、患者さんの状態を常に観察しながら放射線を照射します。
治療に要する時間は10分程度ですが、放射線照射の時間はそのうち1-2分です。照射期間中は定期的に診察を行い、治療の続行が可能か、照射範囲の変更が必要かどうかを判断します。
■ 経過観察
放射線治療は特殊な治療法ですので、放射線治療終了後も獣医師による定期検診が必要です。治ったからとよろこんで診察を受けなかったり、治らないからとあきらめて診察に来ないようなことのないように注意してください。
照射期間中に起こるもの(急性反応)
照射している部位の炎症(口腔粘膜炎、食道炎、皮膚炎、脱毛、胃腸炎など)。
照射が始まって2、3週間した頃から起こり出すのが普通で、治療中にはやや症状は強くなるが、照射が終了すれば約2、3週間で治まってきます。治療中には苦痛が多少はありますが、治療が終了すれば次第に良くなるので心配しないで頑張りましょう。
後から起こるもの(晩期反応)
放射線直腸炎、放射線脊髄炎、放射線肺炎、白内障など、通常治療後半年〜1年経過してからおこる病変をさします。症状も強く、長期間にわたって治らないため、なるべく起こさないように線量と照射野を工夫しています。このことによって、実際の頻度は非常に少ないものとなってはいますが、完全になくすことは困難です。
いずれにしても照射した部位に限って起こるものが殆どで、基本的には全身の症状には結びつきません。
この患者さんは右後肢に腫瘍がありました。放射線治療をおこなった部分に脱毛と色素沈着がおこっています。
腫瘍科には予約が必要になります。
南動物病院(三重)またはベイサイドアニマルクリニック(横浜)まで、お電話でご相談ください。
(ア) 獣医腫瘍内科
・ 化学療法
1. 例えば、リンパ腫(リンパ球の悪性腫瘍)に対する化学療法
(イ) 獣医腫瘍外科
・ 特殊外科
1. 脳神経外科
a. 例えば、髄膜腫(頭蓋内腫瘍)の外科的切除
2. 整形外科
a. 例えば、骨肉腫の断脚術
(ウ) 獣医腫瘍放射線科
◎ 治療時間:午後1〜4時に実施
・ 6MeV直線加速装置による抗ガン治療
1. コンピューターを使用した放射線治療計画
2. 根治治療
a. 治療適応口腔腫瘍
・ 診察時間内:午前中受付
・ 治療時間:午後1〜4時に実施
・ 4MeV直線加速装置による抗ガン治療
b. 治療適応鼻腔内腫瘍
・ 鼻腔内腺癌
・ 鼻腔内扁平上皮癌
[1] 角化性扁平上皮癌
[2] 非角化性扁平上皮癌
・ 鼻腔内軟骨肉腫
c. 治療適応リンパ腫
・ 胸腔内前縦隔洞型リンパ腫
・ 鼻腔内リンパ腫
・ 脳・脊髄内リンパ腫
d. 各種皮膚腫瘍
・ 肥満細胞の腫瘍
・ 皮膚神経鞘腫
・ 肛門周囲腺腫
3. 緩和療法
a.骨肉腫
b.皮膚血管肉腫